新・鉢植右から3番目
さて!
私はふんどしをしめなおす気持ちで居間へと向かった。
最後に見たダレ男は、首からタオルをさげたままの格好で冷蔵庫からミネラルウォーターを出して飲んでいた。もしかしたらいつもの定位置で本を読んでいるかもしれない。もしかしたら、まだ水のボトルを持って台所でボーっとしているかもしれない。もしかしたら・・・・。
私は結構なドキドキ感をもって、そうっと居間へのドアを開けた。なんせ今寝たばかりの桜姫を起こしてしまったら元も子もない。
ちらりとのぞくと、台所にはヤツの姿はなし。そのまま視線をテレビがあるリビングの方へ向けると、ヤツの細めではあるががっしりとした大きな肩を発見した。
───────隊長っ!ターゲット発見であります!!よし、出動~!!
頭の中で号令が鳴り響く。私は無意識に唇を舌で湿らせて、彼の後姿へ足音を消しながら近寄っていった。気持ち的には匍匐前進だ。ターゲット、標準よし!ランチャー用意!勝手に頭の中に戦争映画並みの音が流れ出す。
ヤツはいつもの座椅子に座って、本を読んでいるらしかった。あぐらをかいた足、片膝の上に広げられて軽く置かれた文庫本。ちょっと俯き加減でヤツは読書中だ。
こんな姿も久しぶりだった。時間帯があわなくてほとんど見てなかったのだ。それに、嫌悪感が一番酷かったガルル期の私は、ヤツの姿を見ることすら嫌だった。前は一緒に寝転んで私はヤツの膝枕でテレビを観ていたので、ヤツが何を読んでいるかもしっていたけれど、今ではそんなことも何も判らない────────・・・