新・鉢植右から3番目
────────ターゲットに近づきました!
ペタンと床に座り込み、そっと後から小声で話かける。
「・・・桜、寝たよ。お風呂ありがとう」
うん、とヤツは返してきた。目は淡々と文字を追っているらしい。私はごくっと唾を飲み込んで、ねえ、と言おうとした。その一瞬前にヤツが口を開く。
「風呂入ってきたら。今なら冷めてない」
「・・・あー・・・ええと、そうね、はい」
ごもごもごも。一瞬で勢いを失った私は口の中で出せなかった言葉を処理する。いや、でもその前に君にタッチをだねえ!って。だけどすぐに頭を切り替えた。そうよ!私だって汗だくじゃないの!綺麗になってこなきゃ、相手にも悪いわよね?そう思ったのだ。
だから私はにっこりと笑顔を作って、明るく返事をした。
「じゃあ入ってくるね~」
そしてダッシュで風呂場に向かう。
敵前逃亡は本意ではないが、いざ戦争をしかけて相手に素無視orスルーされてしまうと立ち直れないことは判っている。その理由が私が汗臭いから、であったならもう世を儚みたくなるに違いないのだ。ぜ~ひとも綺麗綺麗しなくては!
いつもなら時間をかけて入る湯船にも、わずか20秒でよしとした。だってだって!!洗わなくちゃ体を!そしてそして、体中の雑草をなんとかしなきゃああああ~!!ぶっちゃけ夫に触られていない体はそこのとこの方が大問題だった。現在はえらく野生化している私の全身なのだ。