新・鉢植右から3番目
そんなわけでリラックスなんて言葉はほど遠い勢いでお風呂タイムを過ごし、私は全速力で寝る準備を整えた。
ちらりと時計を見ると、かかった時間は30分。あれだけ頑張ったけどやっぱり30分は経ってしまったか~!ヤツがもう寝にいってしまっていたら泣けるぞ!
そう思いながらドライヤーをして、そう思いながら適当に化粧水を肌になすりつけた。
よっしゃ、行くわよ~!!
頭の中で忙しくファンファーレを鳴らして私はダイニングに続くドアを開ける。ダレ男、発見!まだ同じ位置で読書中!よっしゃああああ~、突撃~!!
物音で隣の部屋の娘を起こさないように足音を忍ばせて、私はパッと夫の前に回りこんだ。
そして────────大黒柱に頭をぶつけたくなった。
・・・・寝てるし。
寝ちゃってるよ、こいつ。
ダレ男は私の必死の努力にも関わらず、座椅子にもたれて寝てしまっていた。スースーと規則正しい呼吸、そしてゆっくりと上下する胸元。伸びた黒い前髪の向こう、いつもの淡白な瞳は閉じてしまっている。
右手から落ちかけた文庫本の題名を目でなぞって、私は深呼吸した。
・・・あーあ、本当に、もう。私ったらタイミングが悪いんだから・・・。
勿論、起こすことは出来る。ここで寝ちゃ風邪ひくよっていつものパターンで。でも、そうすると当たり前だが相手もいつものパターンで行動をするはずだ。