新・鉢植右から3番目


 つまり、私が起こすと、だら~っと目を開いて(しかも片目だけ。両目は面倒臭いんだそうな)、ぼそぼそと何かを呟き(声が低すぎて聞き取り不可能)、だらだら~っと体を起こして、ほとんど地面につきそうな四つんばいで寝室まで這って行く・・・のだろう。

 あの状態は、ヤツの意識も体も90パーセントが夢の世界にいっちまってるってことが私にもよおお~く判るのだ。

 つまり、そこで例えば私が目の前で素っ裸になってみたとしても、奴はアダルトな世界には行きそうもないってこと。つーか、きっと私に気付かない。

 ・・・あーあ。タッチ、そしてその後の期待はお預け、よね・・・。

 ガッカリとしたけれど、私は深呼吸をして頭を振った。

 でも、ヤツがそのつもりになったって、私はまた拒否反応が出るかもしれないってことを思い浮かべる。そうよ、まだ判らないのに相手をその気にさせるのは酷ってものよね、そう考えて、気持ちを落ち着けた。

 姿を見ることに対して起こっていた嫌悪感は消えている。それに、会話がないことにもイライラしなかった。だから多分、大丈夫だと思うけれど―――――――――

「・・・おーい」

 とりあえず起こそう、そう思って私はヤツに声をかける。恐る恐る手を伸ばして、ヤツの肩を揺さぶってみた。

 ・・・・・・・・・・・・嫌、じゃ、ない。

 おお!拒絶反応が今のところ、ないわよ!!よし、次の段階。ちょっと自信を持った私はもう少し近づいて、ヤツの頬をぐいーんと掴んでみた。


< 56 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop