新・鉢植右から3番目


 射程距離オッケー!軌道修正完了!よし、このまま着地~。

 頭の中ではまた勝手に声が流れ出す。もういいや、私はゆっくりと目を閉じる。よく考えたら、これだって本当に久しぶりのキス────────・・・・


「・・・嵐は去ったのか?」



 バチっと目が開いた。

 はいっ!??急に至近距離で耳に飛び込んできた低い声に、私の全身がトリハダ状態になる。ぞわぞわぞわ~っと寒気すら押し寄せて、私は仰け反って絶叫した。

「うひゃあああ~っ!?」

 引きつって固まる私の前にはぼんやりした表情のダレ男。だるそ~うに両目をうっすらと開いて、かったるそ~うに私を見ている。・・・すだれのような前髪の向こうから。

「・・・うるさい」

 おっ・・・・起きて、た?

 額から急激に大量の冷や汗もしくは脂汗が流れ出すのを感じた。いまだ仰け反って固まった格好のままで、私は何とか呼吸を開始する。あまりにビックリして呼吸の仕方すら忘れていたのだった。

「・・・へっ・・あ、ええと!?お、お、起きてらっしゃったんですか!」

 絡まる舌を何とか叱咤激励して動かしそう言うと、ヤツは欠伸をしながらダラダラ~と応える。

「今起きた」

「あ、そう・・・」

「そしたら」

「へ」

「都が俺を襲おうとしている場面で」

 うぎゃーっ!!私は顔面が火災になったかと思った。思わず両手で顔をバシっとおさえて激しく首を振る。


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