新・鉢植右から3番目
「いやいやいやいやいやいや!!お、お、襲ってなんかないでしょうがっ!」
「だって今」
「うるさいうるさい!」
「・・・煩いのはそっちね。桜起きるぞ」
ぐっと詰まる。詰まった挙句に咳き込みすらした。・・・ああ、可哀想な私。
がっくりと肩を落として私はヨロヨロと後ろに下がる。おかしいな、どうして今こんなことに?あら?私は全身を綺麗にして、それからちょっと漆原大地アレルギー反応を確かめようと・・・。あら?なのに何故、今、こんなに完全敗北したかのような恥かしくて情けない感じになってるわけ?
何かわけが判らない状態のままで、私は呆然と床に手をつく。
・・・ええーっと?桜が起きる?それはまずい。・・・だから、とりあえず静かにしなきゃ駄目なのよね。それで、ええーっと・・・。
床を見詰めながら両手をついて考え込んでいたら、目の前に影が落ちて大きな片手が私の顎の下に添えられた。
は?なんて発言する暇もなく、持ち上げられた私の顔。そしてそのまま、私はヤツの唇を受けていた。
───────あん?
浮かんだ文字はそれだけ。ちゅう~っと10秒ほどの押し付けるだけのキスをして、私と同じような体勢になっていたヤツが顔を離す。
まだ自分の唇に残った温かさや柔らかさを感じたままで、私はポケ~とヤツを見上げた。
たった今、妻に口付けをしたとは思えない普通の顔(つまり、無表情ってこと)で、夫である大地がボソッと呟いた。
「終わったみたいだな」