新・鉢植右から3番目
赤い花が波のように揺れている。
キラキラと光を含んで、真っ直ぐに空にむかって伸びつつある。
その赤い花と緑の葉が、鮮やかに私の視界を埋め尽くした。
「・・・・いつの間に・・・」
驚きで呆然としていると、後から奈緒が笑いを含んだ声で言った。
「あんたじゃないなら漆原でしょうね。まあここからだとカーテンの陰でギリギリ見えない・・・にしても、普通は気付くでしょうよ、あ~んな真っ赤に揺れてるの」
大体庭は、あんたの望みで作ったんじゃなかったっけ?背中にそう飛ばす奈緒の声を聞きながら、私はゆっくりと庭へのガラス窓を開ける。
ザアっと風が吹き通って家の中を通り抜けていった。私は髪を秋風に揺らしながら玄関に近い辺りの庭先で揺れるサルビアの花を見詰めた。
・・・気付かなかった。今まで。一体いつ植えたんだろう。だって、私は夏前からずっと一人で悩んでいて────────その後は桜の病気や自分のことで精一杯で・・・庭はそんなに手のかからない植物ばかりを選んで植えていたのだ。だから、子供が出来てから積極的に世話をしたかと言われると首を振らざるを得ない状態だった。
夏に、椿が枯れてしまった。
それは夫である大地が言っていたのを頭の片隅で思い出した。
『庭の一番端、椿が枯れてるの抜いておいた』そう書かれた手紙を貰ったのは確か、私の誕生日前後だった。あの時に掘られた庭の土を悲しく眺めたことも思い出した。