新・鉢植右から3番目


 仕方なく笑って、私は彼らに近づく。母親に気がついた桜が、あー!と声を上げる。透き通った綺麗な目で見上げて、にこにこと笑ってくれる。

 どこにいたの?そんな問いかけが見えるような瞳だった。ごめんね、母は父に好き勝手されて(と言うと語弊があるかもだけど~)、眠ってしまってました。・・・だけど泣かなかったのよね、あなた。普段あまりいない父親
と二人でも平気だったってことよね。うーむむむ。何か悔しい。

 そんなことを考えたけれど、とにかくと気を取り直して娘を抱っこし、ヤツに聞く。

「それで、プレゼントの感想は?」

 オレンジ色の夕日が差し込むリビングで、いつもの座椅子にもたれかかって、ヤツが目を細めた。口角を少しばかり上げて、微笑みを作る。ゆっくりとしたその動作が、物凄く彼だった。
 
 どうやら、無事に気に入ってくれたらしい。

 私は満足して彼の珍しい微笑を眺める。

 最初にヤツに貰った宝物は結婚指輪。それを私に探させたときと同じ方法を使ったのだ。つまり、用意したのは3つのカード。それに少しずつ次の行き先を書いた。

 最初は床からスタート。寝転んで見える場所に目印が───────それは、不自然にリビングの天井近くを浮いている赤い風船だ。普段ない、強烈な色のもの。誰がどう見ても目印であると判るはずだが、ヤツは私の予想に反して寝転ぶのではなく、床に這い蹲った。・・・バカでしょ。ごろんと寝転んだらすぐ判るのに。


< 74 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop