新・鉢植右から3番目
夕日がサンサンと差し込むリビングで、私は桜を床におろし、ちょっと膨れてヤツに言う。
「鉢植の下のカード、ちゃんと回収しなきゃ鍵置き場にならないじゃない」
するとヤツはすいっとテーブルの上を指差した。私はくるりと振り返って、テーブルの上にくちゃくちゃになって置かれた紙の破片らしきものを発見する。
・・・あら?取りに行ってくれたんだ?ん?でもどうしてくしゃくしゃなわけ?
不思議に思って近づいて、口からうげって声が漏れた。紙(の破片)と思われるものは、水にぬれた様で原型をほとんど留めていなかった。何事?一体、この可哀想な紙に何が。
ヤツをじっと見る。すると、ヤツはふいっと目をそらして本に戻る。そのままでぼそぼそと口を開いた。
「カードは回収して、本を読んでた」
「はあ」
「そしたら桜が食べていた」
「あ?」
何だと!?ぎろりと夫を睨んで、私はがるるると威嚇する。赤ん坊が紙食べた!?どうして手が届く場所にそんなもの放置するのよ~!!
「ちょっと!?」
私の声を平然とした顔でスルーして、ヤツはたら~っとのたまう。だから、ちゃんと止めたでしょ、って。その結果がそれ、って。
・・・ほとんど紙ないじゃんよ。
私は苦笑して、床をず~りず~りと這いずりまわる娘をもう一度抱き上げる。ちゃんと参加したのよね、そう思ったら笑えてきた。
「うふふふ・・・」
柔らかくて白い、娘の頬に頬ずりする。そうよね、あなたも参加したかったんだよねって。