新・鉢植右から3番目


 部屋の中に満ち溢れていた夕日が少しずつ薄くなりつつあった。

 私は桜をヤツの膝元へ転がして、さてと、と立ち上がる。

 お風呂を沸かして、夕飯の支度を始めなきゃ。今日は豚を炒めて、卵のサラダを作ろう。それから・・・。

 もしこれで桜が下痢になったりしたら、今度はヤツに病院へ連れていかせよう。責任の所在をハッキリさせることは大切だ。それを言ったらヤツがする、嫌そう~な顔とため息を想像して、私は苦笑する。


 明りをつけた明るい部屋の中、台所に立つ私の後ろからは、楽しそうな桜の笑い声が聞こえていた。

 私は家族の為にご飯を作りながら微笑んで考える。


 あの子が大きくなって、一人で外出するようになったら。

 教えてあげよう、鉢植の秘密を。

 我が家の鍵置き場がそこに決められたわけを。

 最初の原因になった花と、その花言葉も。


 今は黄色のヒヤシンスが守る、我が家の「大切なもの置き場」を─────────






「新・鉢植右から3番目」終わり。

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