新・鉢植右から3番目
ようやくテーブルに全部を並べると、ヤツが手をあわせてぼそぼそと挨拶をしている。それから黙々と食べだした。
勿論私は邪魔をした。
・・・いやいや、もとい。この素敵なお雛様タペストリーが我が家へきた経過を問いただした、のだ。
「どういうことよ、会社の人が何をしてくれたって?」
「会社の人の知り合い」
「だからその知り合いの人がどういった経緯で?!」
箸をとめもせず、こちらを見もせずに、単語で呟くように言うヤツの言葉を繋げて理解するのに、それからたっぷり30分はかかった。
とどのつまり、こういうことだったらしい。あの晩、私が開いた一方的な家族会議の翌日、ヤツは出勤したあと月一で開かれる本社での会議に現場代表で出席するために、久しぶりに本社へ行ったらしい。そこで、総務で働くお世話好きな事務員さんを見つけて、挨拶がてらぼそっと言ったらしいのだ。
娘が産まれて初節句が来年だが、お雛様で困っている、と。
すると今までの経験で我が家の「困ったこと」を的確に言い当てたその事務員さんが、ダレ男に色々と質問をした後で胸をどーんと叩いて言ったらしい。
『任せて、漆原さん!私にとってもいいアイディアがあるの!!』って。
私はその時点で我慢ならずに突っ込んだ。
「その人が世話好きだって知ってたから、わざわざ会いにいって目の前で困ってみせたんでしょう」
ヤツは生意気にも無視した。黙って味噌汁を飲み干す。