新・鉢植右から3番目
そして、現場に戻って什器の設置をしているヤツに、事務員さんから次々にメールが届く。
去年〇〇百貨店に催事で出ていた私の知り合いの刺繡屋のお雛様飾りはどう?って。名前も入れられるし、それはそれはゴージャスよ、しかも、くるくると巻けば片付け完了で、壁にかけるだけだから場所も取らないの!って。
ヤツは見本の画像を見て、一言返信。
『それでお願いします』
物事は一気に進み、翌週の今日には商品が納品されたってことなんだって。
事務員さんのお知り合いっていうことで名前入れなどを無料にしてもらったらしく、値段もそんなに高くないとヤツが言う。
「それって払いこみ用紙なの?ちゃんと貰ってきた?」
結局人任せで自分はちっとも動いてないのか!という事実に呆れながら、それでもタペストリーが大変気にいった私は明るい声で聞く。
するとご馳走様、と言ったヤツが、首を振った。
「来年1月に百貨店の催事で出すから、その時にスタッフ割引で給料引き出来るって」
「え、マジで?!」
更に安くなるのか!!しかも、その給料引きの手続きもその事務員さんがしてくれるってことらしい。
「──────」
呆れるというかなんというか、自分は動かずに人の手で素晴らしい結果を手にするいつものやつの手法を様々と見せ付けられた私は、バカ丸出しの顔でぽかーんとそこに座っていた。
「口開いてるぞ」
それだけを言って、ヤツはのしのしと洗面所へといってしまう。