新・鉢植右から3番目
・・・いやはや。全く、本当に、恐れ入るわ・・・。私にやいやい言われるのは面倒くさい。母親にガミガミ言われるのも面倒くさい。だけど自分でお雛様を用意するのもこれまた面倒くさいし、出したり片付けたりも面倒くさいから、そのメンドーでだるいことは全部人にやってもらって自分は本を読んで待っていたわけで。その、あくまでもぶれない姿勢に、眩暈を感じたほどだった。
なーんだ、あの男。
もう苦笑するしかなかった。
私は当然、話を聞いてしまったからにはその事務員さんにお礼もした。お礼状をかいて夫に渡してもらい、小さいけど素敵なお菓子の詰め合わせも一緒に。ありがとう、世話好きの人!あなたのお陰で我が家に平和が戻りました!!って。
そして後日。
ちゃんと、それを両母親にお披露目したのだ。これでひな祭りするからねって。
こんな感じにって壁に飾ったそれを、二人は目を真ん丸くして見詰める。うん、その気持ち判る。まさかと思うよね~。こうきたか!って。
「うわあああああ~!!」
最初はびっくりしていたようだけど、二人ともすぐに手にとって見詰めていた。嬉しそうなその顔を見て、私も肩の荷が下りた気分になる。・・・ああ、良かった。気にいってくれたらしい。
とても素敵だわ!見てよ、ここ、さーちゃんの名前まで入ってる!冴子母さんがそう叫び、うちの母親は満足そうに頷きまくっていた。
「いいでしょう~」
「本当に素敵よ!色合いも、お顔も。上品ね。それに出すのも片付けるのも楽じゃあない!」
「うん、そうなの」
まだ来年の話だけど。
私も笑顔になってカレンダーを見詰める。
ちょっと、ひな祭りが楽しみになってきたのだった。
・「漆原家の一日・お雛様編」おわり。