プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
庶民派お嬢様の密かな野望
雨が降っているとばかり思っていた。
真夜中に窓を打ちつけていた豪雨が、こんなにあっさり引き下がるなんて思ってもみなかった。
午前六時。
静かな気配を訝しみながら耳を澄ませてベッドを抜け出した私は、カーテンを開いて思わず「嘘」と呟いた。
薄いブルーの空には、一点の曇りもない。
昇って間もない太陽が、秋が深まりつつある濡れた景色を容赦なく照らしていた。
あと少ししたら雨の痕跡は消されてしまいそう。
午前中いっぱいは雨が残るだろうと言っていた天気予報の完敗だ。
窓を開け放つ。
洗い流されたのか、空気も澄んでいるように感じる。
今日こそは、お父さんに言おう。
何度目かの決意が、今朝もまた私を奮い立たせた。
私は、牧瀬日菜子(まきせひなこ)。
年が明ければ二十六歳になるというのに、大学を卒業してからずっと“家事手伝い”を肩書としている。
どこからも内定をもらえなかったというわけでは、決してない。
……いや、確かに内定はもらっていないのだけれど。
それ以前に、就職活動をさせてもらえなかったのだ。
――父親に。
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