プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

◇◇◇

唐揚げの皿に添えられたレタスをなんとなく箸で弄ぶ。
自宅でそんなことをしたら、きっと清美おばさんから「お行儀が悪いですよ」という叱責が飛んでくるだろう。

ピークのランチタイムを迎えた社員食堂は、私以外の全員がやけに生き生きとして見えた。
私だけが、深くて暗い穴の底にいるようだ。
きっとそれは、私の被害妄想以外のなにものでもない。


「なにかありましたか?」


私の前に座る美月が首を傾げていた。
その薬指に光る指輪が眩しい。


「美月は、旦那様とは恋愛結婚?」

「そうですよ」

「そっかぁ……」


お見合いがダメだとは思ってない。
そういう出会いだってアリだと思う。
そこから相手のことを好きになって恋愛に発展すれば、それはまさしく恋愛結婚だ。

でも私の場合は違う。
ほかに気になる人がいるというおまけ付きだ。


「ちなみに社内恋愛なんです」

「え!? そうだったの!?」

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