プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
といっても、それは彼女の素顔を知っていればかもしれない。
「美月とのギャップがね……」
「ギャップ? そんなものありますか? でも、私が彼の良さを知ってるから、それでいいんです」
美月をこれほどまで虜にする魅力が、倉田部長にはあるらしい。
人は見かけによらないものだ。
「それで、日菜子さんはどうして落ち込んでいるんですか? 結婚がどうとか言ってましたけど、そんな話でも?」
「……うん、親が決めてきた人なんだけどね」
厳密には“おばさんが”だ。
「決めてきたって、お見合いをするってことですか?」
「うーん、そんなとこ」
お見合いをすっ飛ばして、即結婚といったほうが正しいかもしれない。
なんせ、お互いの気持ちの確認をするまでもなく、結婚は決められたことなのだから。
今朝も起きて早々、「日菜ちゃん、初顔合わせはいつにする?」と清美おばさんに聞かれた。
完全に乗り気なのだ。