プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「日菜子さんって、もしかしていいところのお嬢様ですか?」
「え!? ううん、違うよ。普通の家庭」
「そうなんですか? 決められた相手なんて言うから、政略結婚とかそういうことかと思っちゃいました」
ギクリとしたのは否めない。
それをなんとかポーカーフェイスで誤魔化した。
「日菜子さん、今まで誰とも付き合ったことないって言ってましたよね?」
「……うん」
恥ずかしながら。
年齢イコール彼氏いない歴だ。
「それでお見合いって、なんかもったいないですね」
もったいない、か。
それより、この不安定な気持ちの行き場をどうしたらいいのか、だ。
「まあ、結婚してから相手と恋愛ってのもあるとは思いますけど。日菜子さんは好きな人とかいないんですか?」
祐希の顔が浮かんで、胸が締めつけられる。
“好きな人”というキーワードで祐希が安易に浮かぶようになってしまった。
完全に囚われてしまったみたいだ。
……困ったな。
「その顔はいるって顔ですね」
「えっ、やだな、違うよ」
慌てて取り繕う。
それも、美月が心配していた祐希だと知ったら、いったいどんな顔をするだろう。
「そうですか?」
「うん」
これでもかというくらい、頭をぶんぶん縦に振った。