プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

「……キスを……」

「……はい?」


祐希が私の顔を覗き込んだ。
その目をいったん見て、即逸らす。
こんなこと、祐希の目を見て言えることじゃない。


「あのね、キスをしてほしいな、と……。できればその先も」


隣で祐希が息を飲むのを感じた。

急に空気が張りつめたようになる。
それが伝染したように私の胸をじりじりと締めつけた。

祐希はなにも言わない。
このままではねじが何本も外れた、頭のおかしい女だと思われてしまう。
私のお願いは即刻却下だ。


「えっとね、変な意味じゃないの」


充分変だ。


「祐希も知ってると思うけど、私、年齢と彼氏いない歴がイコールでしょ。ということは、キスも、その……“あれ”も知らないの。それだとちょっと恥ずかしいというか……」


祐希はピクリとも動かない。

ただ、痛いほどに強烈な視線を頬に感じた。
それはたぶん、受け手側の私があまりにもテンパっているから。
私が勝手に感じていることだろう。

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