プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「写真で見た感じだと、たぶん女性に慣れた人だと思うの。だから、結婚相手の私がキスの仕方も知らなかったら不満じゃないかなーって。それで機嫌を損ねられたら、お父さんも清美おばさんも大変だし。それだけなの。ただ教えてくれればいいから」
必死だった。
それが私を早口にさせる。
本当はそうじゃない。
教えてほしいわけじゃない。
百歩譲って結婚は受け入れる。
でも、せめて“初めて”は祐希と……。
身勝手なお願いだということはわかっていた。
祐希と涼香さんが恋人同士かもしれないのに、尋常じゃないと。
でももしも、ここまでして祐希が『NO』だと言うのなら、彼の気持ちを優先するしかない。
「本気で言っているんですか」
長い沈黙のあとだった。
低い声で祐希が尋ねる。
思い切って彼のほうに顔を向けると、頬に感じていたままの強い視線とぶつかった。
今度は逸らさずに、ゆっくり頷く。
緊張が背筋を駆け抜けていく。
祐希の眼差しが一瞬揺らいだ。
「約束、できますか?」
「……約束?」