プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「……今だけでいいから」
せめてこのときだけ。
祐希に引かれた線を飛び越えたい。
祐希は軽く頷いた。
「おいで」
祐希の腕が回されて腰が引き寄せられる。
そのまま抱きすくめられて、息が止まるかと思った。
「……日菜子」
単なる呼び捨てが、こんなにも心を揺さぶるものだと初めて知った。
胸の震えが止まらない。
透明な壁が一気に取っ払われたような感じだった。
祐希のかすれた声が耳に残る。
「祐希」
もう一度呼んでほしくて、私も彼の名を呼んだ。
祐希が私をそっと引きはがし、見つめ合う。
彼の眼差しが熱かった。
そんな祐希を見るのは初めてだった。
彼が私の髪を撫でながら、耳へとかける。
「目を閉じて、日菜子」