プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
雪さんが空のコーヒーカップを持って私の部屋を出たところで、ちょうど祐希と出くわした。
「おかえりなさいませ、祐希様」
「ただいま帰りました」
そのやり取りを聞きながら、鍵の存在を思い出した。
涼香さんに託された部屋の鍵だ。
いつまでも渡さずにいても仕方ない。
部屋の中から祐希を呼び止めた。
雪さんは今度こそは邪魔しまいと思ったか、そそくさと立ち去った。
「これ……」
キーホルダーもなにも付いていない鍵を祐希に差し出す。
祐希は「なに?」という顔だった。
「涼香さんから預かった」
「……涼香から?」
「“今夜でも明日でも”って」
今すぐ会いたいってことだ。
祐希は鍵を握り締めると、「ありがとうございます」と言った。
昨夜は何事もなかったかのような様子だった。