プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
小さな罠
「日菜ちゃん、顔色が優れないわね。昨日のお店で疲れたんでしょう」
清美おばさんが食卓を囲んで私を心配する。
「ううん、大丈夫だよ。立ち仕事なんて初めてだったから足は棒だけど」
「がんばったな、日菜子」
お父さんも労ってくれた。
顔色が優れないのは、きっと連日の寝不足のせいだ。
今朝は、午前四時に静まり返った自宅に戻ったものの眠れず、ベッドの上で朝まで過ごした。
人生で一番寝返りを打っただろうと思うほど寝苦しかった。
きっと午後あたりになってから睡魔が襲ってくるに違いない。
祐希からは六時頃に着信が一度あったが、気づかないふりをして出なかった。
「七号店のオープンも無事に終わったし、日菜ちゃん」
清美おばさんの顔が綻ぶ。
なにを言いたいのかは聞かなくてもわかった。
私の将来に思いを馳せることで、祐希がここを出て行った悲しみを解消しているのかもしれない。
「いつでもどこでも、決められたことに従うから安心して」