プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
◇◇◇
午後一時。
知らん顔をするわけにもいかず、お昼から戻ってすぐに応接室Aへと入った。
それは第二事業本部の隣にある四畳半ほどのスペースだった。
四人掛けの応接セットとサイドテーブルだけがある、殺風景な部屋だ。
じっと座っていられなくて、立ったまま待っていると、一時を数分過ぎたところで祐希が現れた。
この前の夜以来の顔合わせだった。
気恥ずかしくて俯く。
「お疲れさまです」
ひとまず挨拶をしたのに、祐希は返してもよこさない。
どこか機嫌が悪そうなオーラを放っていた。
「ちゃんと帰れたんですか」
「あ、うん、大丈夫だったよ」
沈黙が私たちを包み込む。
こんなに近くに祐希がいるのに、もう触れることもできない。
あのキスも、抱かれたのも単なるレッスン。
祐希が“どうなっても知らないぞ”と言ったのは、私が祐希に身も心も奪われても知らないという意味だったのだろう。
私が勢いに任せて気持ちをぶちまけたから、それでも知らないぞと。
その証拠に、祐希はいつもの敬語だ。
私から一歩引いている。