プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

◇◇◇

それから数日経った夜のこと。
清美おばさんが私の部屋へ上機嫌でやってきた。
その様子から、なんのネタを持ってきたのかはわかってしまう。


「日菜ちゃーん」


今にも歌い出しそうだ。


「例の日取りが決まったわよ。今度の土曜日」

「ずいぶんと急だね」


十二月も半ば。
年明けになるだろうと軽く考えていた。


「年内に結婚を決めて、新たな気持ちで年を越したほうがいいんじゃないかと思って。先方も大賛成だったのよ」


そして、来年の春頃には結婚式をセッティングされるんだろう。
とんとん拍子で進む話は、どこか他人事のようだった。


「午後一時だからちゃんと空けておいてね。向こうの指定でホテル内の料亭よ。着物を新調してあるから、それを着ましょうね」


まるで自分のことのようにウキウキしている。
あちらから婿をもらう話はどうなったか。
さすがに無理な話と諦めたか。

考えてみたところで、私にしてみればどちらでも同じだった。

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