プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

この家の中には、雪さんが放った忍びが潜んでいるんじゃないか。
そう勘繰ってしまう。


「まるでコソ泥のように家の中を歩く日菜子様に突然お声をかけて驚かれてはいけないと、こっそり影から見ておりました」


――コソ泥って!
それなら潔く「おかえり」とでも言ってもらったほうがよかった。

盗み見られていたのかと思うと恥ずかしい。
思い返してみれば、確かにコソ泥みたいだったかもしれないと思ったのは内緒だ。


「日菜子様の表情を見て、ピンときました。祐希様とご一緒だったと」


あの暗がりで私の細かな表情まで?
私はなんにも見えなくて手探り状態だった。
雪さんは夜目も効くのか。
しかも、祐希と“なにか”があったことまでお見通しとは。

一気に耳まで熱くなる。
雪さんの観察眼と読心術をもってすれば、私は丸裸だ。
本当に勘弁してほしい。

なにも返せないでいる私に、雪さんは寂しそうに微笑んだ。


「なんとかならないものでございますかね……。清美様さえお心を変えてくださればいいのですが……」


この家の主は、まるで清美おばさんみたいだ。

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