プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
そこでピンときた。
――あの人だ。
名前すら知らないけれど、あの夜の祐希と私を見たのは、あの人しかいないから。
なんの嫌がらせなのか、わざわざ私のことを調べ上げたみたいだ。
「本当みたいですね」
美月は私の狼狽する様子から確信したようだった。
「……ごめんね、美月。騙すつもりはなかったの……」
「あ、いえ……」
美月はそれでもまだどこかよそよそしい。
「……日菜子さんはその……密偵ですか?」
「密偵?」
「従業員のことを観察して、いろいろと社長や専務に報告するんじゃないかと」
「まさか!」
それで美月はこんなにおどおどしているのか。
「そんな役目を担うためにここに来たんじゃないの」
「それじゃどうして? 社長令嬢なら働く必要はないでしょうし」