プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

「やだな。そんなことしないのに」


私には密偵は無理。
朝帰りの抜き足差し足も、雪さんにバレてしまう私には。
すぐボロが出てジ・エンド。
雪さんなら適任だろうけど。


「そのトークを送信したのってなんて人?」

「それが、わからないの」

「わからない?」


IDでログインをしなくてはならないから、個人を特定できるはずなのに。


「それが、営業部に一台ある共通パソコンから送信されていて」


美月はそう言いながら、自分のスマホを私に見せた。
確かに送信者の欄には“営業部”とだけしかない。
誰が送ったのか特定されないようにそうしたんだろう。


「でも、営業部の誰かであることは確かですね。そのパソコンのパスワードは営業部員しか知らないはずだから」


姑息なことをする人だ。
あの夜のあの人がそんな人だったとは。
ついて行かなくて本当によかった。

< 213 / 260 >

この作品をシェア

pagetop