プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「あの人は営業部の富田さんです」
――営業部。
やっぱりそうだ。
彼に違いない。
ただ、そうだという証拠はなにひとつなかった。
「富田さんがどうかしたんですか?」
「あ、ううん」
はっきりと言い切れない以上、美月に話すわけにはいかない。
新店で見かけたからと誤魔化した。
「ところで日菜子さん」
美月にチョンチョンと肩を突かれる。
富田さんの姿が見えなくなるまで軽い怨念を乗せて見送ってから、美月に振り返った。
「社長令嬢が本当なら、最後の“真壁祐希と付き合っている”も真実ですか?」
「えっ……」
核心を突かれて言葉に詰まる。
美月の瞳の奥に鋭い光を見てしまった。
ジッと見つめられて思わず逸らす。
不審に思われるには充分だ。
「ううん、違う」
それでも否定は忘れない。