プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

事実、付き合っている間柄ではないから。
私が勝手に片思いしているだけだ。


「それは勘違いだと思う。真壁さんと仕事のことで意見し合っているのが、なぜか痴話げんかにでも見えたのかも。うん、きっとそうだよ。タクシーに一緒に乗ったのも、別に他意はないよ。オープンの打ち上げで遅くなって送ってもらっただけだから」


言い訳は早口になる。
早いところ弁解を終えたい心理なんだろう。


「そうですか。真壁さんも、いよいよ彼女を作る気になったかと思いました」

「……ねぇ、美月」


ん? と彼女が首を傾げる。


「オープンしたばかりのエンジェルレインの店長は?」

「えっと成田さんでしたっけ? え? 彼女が真壁さんの恋人だと?」

「違うの?」

「違いますよ。全然違います。だって成田さんは……」


美月は急に声のトーンを落とした。
彼女に耳を寄せる。


「うちの逸見本部長の愛人だから」

「えー!?」


思わず大きな声が出てしまった。

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