プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
ふたりに隠された秘密
キュッと締め上げられた帯に前のめりになる。
「大丈夫でございますか?」
雪さんは帯を捕まえて私を支えた。
「……うん、なんとか」
着物がこんなにも苦しいものだと忘れていた。
成人式以来の和装だ。
ピンク地に色とりどりの小花があしらわれた着物は、清美おばさんが呉服店を何店も梯子して見つけた、貴重な一品らしかった。
今日はこれから、ミシェルブルーの御曹司との初顔合わせが控えていた。
窓から見える外は、昼間だというのに薄暗い。
私の憂鬱な気分を知ってか、朝から雨模様だった。
雪さんはもう一度帯を直して、「完了でございます」と鏡越しに私を見た。
「ありがとう、雪さん」
「綺麗なのに、なんだか涙が出てしまいます」
そう言いながら、雪さんがエプロンから出したハンカチで目尻を拭う。
「まもなく日菜子様がこのうちからお出になってしまうのかと思うと……」