プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「日菜ちゃん、準備はどう?」
私の部屋のドアを開けるなり、清美おばさんが「あらまあ!」と奇声を上げる。
「とーっても綺麗よ、日菜ちゃん。よく似合ってる。私の見立ては間違ってなかったわ」
そう言って私を三百六十度グルリと観察した。
清美おばさんだって負けていない。
藤色に大柄の花が描かれた着物は、品の良さを引き立てている。
綺麗だった。
「お相手もきっと気に入ってくださるわ」
名前を聞いていたはずが、思い出せなかった。
渡辺だったか、橋本だったか。
結婚する相手の名前にすら興味がないとは。
そんな人と結婚しようというのだから、なかなかファンキーだ。
会ってから好意が芽生えることを期待するしかない。
まるで手ごたえのない願いだった。