プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
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身支度を整え、ダイニングルームへと向かう。
ドアを開けると、六人掛けのテーブルには私以外の顔ぶれがすでに揃っていた。
「おはようございます」
私の挨拶に、パラパラと同様の言葉が返される。
お父さんが読みかけの新聞を畳むと、家政婦の雪(せつ)さんが素早く、かつ静かに受け取った。
食卓には彼女が作った、純和風の朝食が並んでいる。
お父さんの向かい側が私の定位置だ。
私が座ったのを合図に、雪さんが茶碗に盛られたご飯を四つ順番に置いていく。
お父さんの隣は清美おばさん、歳が十も離れたお父さんのお姉さんだ。
確か、今年六十五歳になったはず。
美しいシルバーグレーの髪の毛は、軽くパーマのかかったショートカット。
歳不相応に豊富な髪の量は、弟であるお父さんもまた、その遺伝子を受け継いでいる。
彼女は一度結婚してこの家を出て行ったものの、十年足らずで離婚して、再びここへ戻ってきたらしい。
私が産まれたときには、すでにお母さんの立派な小姑として君臨していたのだ。
お母さんは、私が三歳のときに病気で亡くなった。
といっても、清美おばさんから受けるストレスということではない。
お父さんや雪さんの話によると、ふたりは本当の姉妹のように仲が良かったそうだ。