プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
きっと、折り目正しい性格なんだろう。
祐希みたいだ。
「日菜子さんは敬語をやめてくださって大丈夫ですけど、私のほうは見逃してもらえると助かります」
「わかりました。それじゃ、そうしましょ」
無理強いするのはよくない。
彼女はトレーにのせてきた湯飲み茶わんを持ち上げた。
飲むのかと思いきや、それを私に向かって突き出す。
なんだろうかと見守っていると、彼女は「乾杯しましょ」と無邪気に笑った。
友達になったお祝いといったところか。
鈍い音を鳴らしてカップを合わせる。
中身も健気な真面目タイプ。
おとなしそうに見える外見通りの印象だった。
そこでふと、彼女が赤い眼鏡を外す。
何気なく見ていた私は、手にしていた湯飲み茶わんを落としそうになった。
そして絶句する。
今まで大振りの眼鏡で隠されていた素顔が、私から言葉を奪った。
サーモンピンクのルージュが映える透き通った肌。
目鼻立ちがはっきりとした、華のある顔立ちだったのだ。
美人だ。
つい見入ってしまうほどの美人だ。
地味だと思っていた私の、なんと観察力のないことか。