プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「だとしたら、真壁さんの元に就いて驚きませんでしたか? 仕事ってこんなに大変なの? って」
「大変というか、すごいのひと言」
祐希の手にかかれば、売場が生まれ変わったように見違える。
まるで魔法にでもかけられたみたいだった。
「真壁さんは第二事業本部でもトップクラスですから」
やっぱりそうなのだ。
自分のことじゃないけれど、なんだか誇らしい気分になる。
「これは社内でも伝説になってるんですけど……」
そう言って美月が話して聞かせてくれたのは、二年前の冬の話だった。
エンジェルレインのダウンコートを四千着も発注し、それをひと冬で完売させたというのだ。
金額にして約一億二千万円の発注だったそうだ。
上司からも『そんなに売れるわけがない』と制されたが、祐希は退かなかったらしい。
結果、飛ぶように売れたと。
その話はセブンスゲートで伝説になり、今でもたびたび話にあがるそうだ。
「当然のことながら仕事には人一番熱心ですし、一生懸命なんです」