プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

それは昨日一日だけでも充分に伝わってきた。


「販売部の部長になるのも時間の問題じゃないかと言われています」

「そうなんだ……」


それは本当にすごい。
まだ二十九歳だというのに部長候補だとは。


「なんか日菜子さん、嬉しそうですね」

「……そう?」


つい顔に出てしまったらしい。
誉められているのは祐希だというのに、どうしても顔が綻んでしまう。
それはきっと、ひとつ屋根の下に住んでいるせいだろう。
家族同然だからにほかならない。


「ところで日菜子さん、彼氏は?」


美月の唐突な質問には、口に入れたばかりの生姜焼きを暴発させるところだった。
なんとか堪えたものの肉を丸飲みしてしまったものだから、今度は窒息寸前に陥る。
むせてしまった。


「大丈夫?」


涙目で頷きながら、お茶で流し込む。


「ごめんなさい、知り合ったばかりなのに変な質問して」

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