プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「なら、つべこべ言わずにおんぶですね」
祐希はもう一度しゃがんだ。
痛い足。
無理すれば歩けないことはない。
でも、牛歩にすら劣りそうなスピードでは朝ごはんに間に合わない。
朝食は四人が必ず揃うことという、牧瀬家の家訓に反することをしてしまったら、清美おばさんの厳しい叱責が飛ばないとも限らない。
こうなったら、背に腹はかえられぬ。
祐希の背中にドーンと私の身体を預けた。
途端に彼がよろける。
「相撲の立ち会いじゃないんですから」
祐希が毒づいた。
私は関取か。
「あれ? なにか言うことはないんですか?」
よいしょと体勢を立て直しながら祐希が軽くうしろを仰ぎ見る。
「あ……えっと、よろしくお願いします」
「よろしい」
満足気に頷く祐希の後頭部に、一応『重くてごめんなさい』と念じて唱えた。