プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「清美さん、ひとまず喉を潤しませんか?」
差し出されたのは、おばさん専用の湯飲み茶わんだった。
淹れたてなのか、湯気が立っている。
清美おばさんの前、私の隣に座る祐希が差し出したものだった。
美しい横顔には優雅な笑みが浮かんでいた。
いつの間に手配したのか、雪さんに淹れてもらったんだろう。
「あら、ありがとう。祐希さん」
お父さんの声は耳に入らないというのに、祐希のものは入るみたいだ。
清美おばさんはゆったりとした笑みを浮かべ、湯飲み茶わんを手に取った。
彼の名は真壁祐希(まかべ ゆうき)。
私より四つ年上の二十九歳、独身だ。
レイヤーの入ったサラサラな黒髪。
切れ長の瞼からは、輪郭の大きな瞳がしっとりとした光を放つ。
細い鼻筋に薄い唇。
シャープな印象を受ける顔立ちは、嫌味なくらいに整っている。
ちなみに性格もシャープだ。鋭い。
お父さん、清美おばさん、私の三人が暮らすこの牧瀬家に、ただひとり住む赤の他人である。
彼のご両親は不慮の事故で亡くなり、古くからの友人であるお父さんが祐希をこの家に引き取った。
中学三年生の彼がこの家に来たとき、私は小学六年生だった。