プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
身長こそ発展途上だったろうが、その頃から完成された容姿の持ち主だったことは今でもよく覚えている。
当時の私は、中学三年生が放つものとは思えない色香を彼から感じていた。
ただ、それにたじろぐほどの成長をしていない私は、彼の色気を蹴散らすように祐希に無邪気に絡んだ。
四つも年上なのに、その頃から呼び捨てだし敬語を使った記憶もない。
母親を早く亡くしたせいでしつけがなっていないと言われたら、立つ瀬もない。
対して祐希は、小学生の私を“さん”付けで呼び、ですます口調で話した。
それから十年以上が経った今でも、それは変わっていない。
お茶で喉を潤したおかげか、はたまた祐希の気遣いのおかげか、清美おばさんは大きな目の横にしわを刻んで穏やかな表情になっていた。
祐希は清美おばさんのお気に入りなのだ。
「美味しいわ、祐希さん。ありがとう」
清美おばさんが祐希に微笑みかける。
いやいや、それを淹れたのは雪さんだからと言いそうになるのをぐっと堪えた。
おばさんの猛攻をいったん阻止してくれて、私だって助けられたのだから。
でも、ここで止めるわけにはいかない。
居ずまいを正して、もう一度お父さんを見た。
「少しの期間でいいの。例えば半年とか一年とか。それくらい働いたって、結婚が遅くなるような歳じゃないし。清美おばさんの言う“然るべき人”と結婚しないって言ってるわけじゃないの。その前にほんの少し、外の世界を知りたいだけ。……ダメ?」