プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
幼いときから、好きな人と結婚できないことはわかっていた。
それに対して、反発する気持ちも持ったことはない。
これもひとえに、清美おばさんの“誘導”の賜物なのか、それとも諦めの境地なのか。
働きたいというのは、私の初めての反乱だった。
「だからね、日菜ちゃん――」
「ねえさん、ちょっと待ってくれないか」
お父さんが清美おばさんを制する。
珍しく少し強い口調に驚いたのか、おばさんはハッとして口をつぐんだ。
風貌に見合う、ちょっとした威圧感を覚えたのは気のせいか。
清美おばさんが黙ったのを確認すると、お父さんは私のほうに顔を向けた。
「働きたいというのは本気なのかい?」
意思確認に頷く。
「どんな仕事でもいいの。一度、自分で働いてお金を稼いでみたい」
お小遣いに不自由したことは、物心ついたときから一度だってなかった。
必要なものはあてがわれ、欲しいと言ったものはたいてい買ってもらえた。
かといって、手当たり次第になんでもかんでも欲しいと言ったわけではないと、ここで弁解だけはしておきたい。
自分なりに我慢したこともある。