プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
心の異変は突然に
新たにオープンするエンジェルレインの直営店では、商品の納入が始まっていた。
私は祐希とふたり、そこへ足を運んでいた。
足の怪我から約十日。
さすがに二日後の月曜日は、怪我したほうの足をちょんちょん突くような歩き方になっていたものの、今ではすっかり元通りだ。
準備に追われているオープン前のお店に入るのは初めてで、ごちゃごちゃとした乱雑さがかえって新鮮に映る。
祐希の検品を補助していると、ヒールの音がざわついた店内に響いた。
それを耳だけでとらえていると、徐々に近づいたかと思ったら私たちのそばで止まった。
そこで初めて顔を上げる。
「お疲れ様です」
先に挨拶をした相手に遅れて、私も「お疲れ様です」と反応する。
襟足ぎりぎりのショートボブをした、可愛らしい顔立ちの女性だった。
彼女の目線は、私ではなく祐希へと注がれる。
「お疲れ」
祐希も手を止めて、彼女に挨拶を返した。
「スタッフの採用は順調?」
「ばっちりよ。有能な経験者も引っ張ってきたし」