プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

祐希の質問に答えながら、彼女はうしろを振り仰いで人差し指である人物を指した。


「さすが涼香(りょうか)。思った以上に順調に準備も進んでいるし、涼香に任せておけば心配いらないな」

「やだ、やめてよ」


涼香さんと呼ばれた彼女は、祐希の腕を軽く押す真似をした。

祐希が敬語を使わずに話す女性を初めて見た気がする。
しかも呼び捨てだ。

同じ第二事業本部内でも、一緒にまわったお店でも、見かけない光景だった。
そのせいか、ものすごく親しげな関係に見える。

それから二言三言、言葉を交わしたところで、初めて彼女の視線が私へと向けられた。


「こちらは?」


祐希は私をチラッと見たあと、「牧瀬日菜子さん。少し前から僕のアシスタントをしてもらってる」と紹介してくれた。


「牧瀬です。どうぞよろしくお願いします」

「牧瀬? 社長と同じ名字なのね」


一族じゃないかと怪しんでいるわけじゃなく、話の流れで聞いただけだとわかっていてもギクリとしてしまう。

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