プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
つい目を泳がせてしまった私に、祐希は「たまたまね」と助け船を出してくれた。
「そういえば、前任の子、おめでただったね」
話が一気に逸れてくれて、安堵の息を漏らした。
「私は成田涼香です」
「ここの店長です」
涼香さんの自己紹介のあとに、祐希が付け加えた。
エンジェルレインの店長は、みな女性だ。
そして、“店長”という肩書からイメージするよりも若い。
たぶん涼香さんも二十代後半くらいだろう。
共通して言えることは、どの店長も生き生きとしていることだ。
外見はもとより、内から滲み出るパワーに圧倒される。
きっと、誇りを持って自分の仕事をしているのだろう。
そうして挨拶が済んでしまうと、私から興味を失くしたらしい彼女は、再び祐希とふたりだけの会話へと戻った。
ふたりでトルソーを組み立て、そこにどの服を着せようかと打ち合わせが始まる。
既に数点は、店舗奥の壁にディスプレイが済んでいる洋服もあって、着々とレイアウトが完成しつつあった。
私は合間に祐希から出された指示に従って、梱包を開けては一枚板になっている棚の上に広げていった。