プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

高校や大学時代の友人とも、会うときは土日の昼間が多かった。
家族以外で夕飯を外で食べるのは、ずいぶんと久しぶりな気がする。
そういえば、祐希とふたりは初めてだ。


「それとも家まで我慢しますか?」

「行く!」

「行くとは?」

「だから、外で食べる!」


力説するように拳まで振って答えると、祐希は鼻を鳴らして笑った。

飼い主に尻尾を振る犬のような反応をしてしまったことが、ちょっと悔しい。
握った拳をうしろ手に隠して誤魔化した。


「では、そうしましょう」


外食が決定すると、祐希はスマホを取り出した。


「祐希です。仕事で遅くなりそうなので食事を済ませてしまいます」


相手は雪さんとみえる。
『私のことも伝えてね』と自分を指差して小さい声で言うと、祐希は私を手で制した。
親指と人差し指で円を作って、オッケーということらしい。


「え? あ、はい、日菜子さんも一緒です」


私をチラッと横目で見てから答える。

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