プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「――いえ、違います。いやそうじゃなくて、ゴホッ」
祐希が突然むせた。
そして、なぜか私に背を向けて声のトーンを落として話し出す。
どうしたのかと回り込んで彼の顔を覗くと、それに合わせて祐希は身体を回転させた。
「じゃ、行きましょうか」
雪さんとの電話を切ると、祐希は何事もなかったかのように足を出した。
今のはなんだったのか。
「なにを食べに行くの?」
急いで追いついて横に並ぶ。
「雪さん、なんだって?」
矢継ぎ早に質問を重ねると、祐希はほんの少し眉を潜めた。
「別になんでもありません」
「そうなの?」
やけに慌てた様子だったけど。
祐希が取り乱す姿は珍しい。
「僕の好みで店を選びますが、いいですか?」