プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

「あ、うん。もちろん」


どこに連れて行ってくれるんだろうかと気持ちが弾む。
祐希が手を上げて捕まえたタクシーにふたりで乗り込んだ。

そして走ること十分。
降り立ったのは、大きな赤ちょうちんがぶら下がる店の前だった。
香ばしい匂いとともに、小さな窓から白い煙が立ち上っていた。
看板にはやきとり屋【一休】とあった。

ガラガラと音を立てる引き戸を開けた祐希に続いて中に入ると、それほど広くない店内は薄っすらと煙が漂い、席の大半は埋まっていた。


「いらっしゃい!」


威勢のいい挨拶にちょっとびっくりしながら、かろうじて空いていたカウンターに祐希と並んで腰を下ろす。
炭火焼の真ん前だ。
過去には透明だったであろうアクリル板越しに、網の上でやきとりが焼かれていた。


「祐希、よく来るの?」

「よくではないですけどね。日菜子さんには強烈すぎましたか」


目を瞬かせて店内をキョロキョロしている私をたしなめるつもりだったか、祐希は出されたおしぼりで手を拭きながら言った。
違う人種だと一線を引かれたようだ。
そんなことはないとばかりに居ずまいを正し、祐希に倣っておしぼりを手にした。

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