プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
こういった店はおじさまたちのたまり場といった印象を持っていたが、そうでもないみたいだ。
現に隣には、私と同年代の女性が座っている。
グラスの中は透明の液体。
小さめの瓶から手酌で注いでいた。
ラベルから察するに日本酒だ。
ちょっと呂律が回らない感じで、隣に座る五十代くらいの男性と話していた。
やきとりを食べたことがないわけじゃない。
専門店に足を踏み入れるのが初なだけだ。
「僕が適当に注文しますが、いいですか?」
「お願いします」
「なにか飲み物は?」
「あ、じゃあ……ウーロン茶で」
実は、お酒はちょっと苦手だ。
人生でただ一度だけ行ったことのある合コンで、無理やり飲まされて意識を飛ばした過去もある。
そういえば、あのときに迎えに来てくれたのは祐希だったっけ。
祐希の運転する車の中で、眠りと覚醒を繰り返しながら彼の説教を延々と聞かされたことを思い出した。
『女性の泥酔がどれほど危険なことか分からないんですか』
『男の力に適うはずがないんですから』
『それにその匂い。女性から発せられる匂いとは思えません』
そんな厳しい言葉を家に着くまでずっとだ。
今思い出しても、なかなか毒舌じゃないか。