世界でいちばん好きな人

コンクール間近。

なんとなく成績もあがってきた頃。


だけどコンクールを控えたあたしに課せられたのは、ひとつのテクニック。

先輩だって出来なかったあの技術を、あたしなんかができるわけないよ‥





晴れた放課後。

ひとり、中庭で練習してたあたしの後ろに出来た影。


「気になったから来た」

「…?」

「聴いてらんなかったから。‥職員室まで聞こえてた」

「仕事に集中できないくらい下手だと!?」

ちょっと強気に言ったあたしに笑顔をくれたあと

「どう?出来そう?」

なんて。


出来ないから困ってるの知ってるくせに。

職員室で、よくあたしの音色だってわかったね。


それから30分にも渡って繰り広げられた個人指導。


「うん、いいんじゃない?」

「わかってきた!先生ありがとう!」

「はいはい、頑張ってください!」



緊張した。

緊張したよ‥



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