SaltyTriangle*
「よくもまぁ、そんな思ってもないことを。私が可愛いとかありえないし。あんた目ぇ腐ってんじゃない?」
って、またこんなこと言っちゃって!
ツンデレも大概にしろよ、自分。あ、デレは無いか。
こんなんだから、いつまでも幼馴染から昇格できない……
でも事実、私のこの男勝りな性格が可愛気なんて醸し出すわけないし……。
「だよなー。梓は色気より食い気、オシャレより運動だもんなー。」
「それなー。絶対性別間違えて生まれてきたわ。」
自分の恋愛に絶望を感じながら、楓と廊下を歩く。
私はb組、楓はa組。このクラス割を見たとき以上の絶望が私を襲う。
あー、本当今更だけど。脈ねぇ〜。
望みなさすぎて笑い出てくるわ。
トボトボとb組の教室に向かう私と、a組に足を踏み入れる楓。
ふと、足を止めた楓がこちらに振り向く。
「あず。」
「んー?」
「また帰りな。」
少し微笑んで、言うから。
やっぱり、ドキッとする。
「うん。」
こんな風に、楓が笑いかける女子は、私だけ。
この歳になってやっと、昔読んだ幼馴染ものの少女漫画の主人公の気持ちがわかる。
当初は意味不明すぎて途中で読むのやめたっけ。
教室に入って自分の席についてから、ボソッと呟いた。
「まだ家にあるかな、あの漫画。」
あったら読んでみよう、うん。
「カヤノー!おはよー!朝からテンション低くね?」
私と対照的なテンションで話しかけてきたこの子は瀬戸嘉音(せと かのん)。
ちなみに私のことを苗字で呼ぶ女子は少なくない。梓って呼ぶのは本当に楓くらいのもの。
「おはよ、瀬戸。」
瀬戸はとにかく元気。ちょっとやかましい噂好きの女の子で、サバサバしてるからか結構気が合う。
苗字呼びなのは、だって、ねぇ?
この子、“かのん”って感じしないんだもん。