白いゼラニウム
白いゼラニウム

事故

ゴク、と喉がなる。
美味しいと特に思わないこの液体を傾け、喉に流し込む。
この作業を今日は何回しただろう。

酒は、苦手だ。付き合いじゃないと飲まない。上司に仕方なく付き合って、だとか。合コンで飲めないとカッコ悪いから、だとか。飲む理由は沢山ある。その度に俺は無理して酒を飲んだ。

最近だと、成人式のときはかなり飲んだ覚えがある。

今日、俺は1人だった。誰に何も言われない環境でただただ静かに酒を飲む。いつ付いたのだろうか、スーツに染みができていた。
目の前におしぼりがあるが、別に染みを拭こうとはしない。

俺はカウンターに座っている。丁度真上に証明があり、オレンジ色のライトが唐揚げを照らしている。油がぴかぴかと光り、反射していた。
始めてきた居酒屋だが、なかなかうまい。誰にも見つからない、誰にも会わない居酒屋を探してここへやってきた。

奥の座席からは男女の騒ぐ声が聞こえる。テーブル席ではOLらしき2人組が上司の悪口を惜しげもなく発している。

証明に照らされながら体が燃え上がるように熱くなっていくのを感じた。
今、何時だ?
俺は腕時計を確認した。
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