#恋·恋
ガチャッ
「―――お疲れ様」
扉を開けると、目の前の人物が視界に映る。
ヤバい。
早く荷物を持って出よう。
目の前の人物―――菅原(すがわら)
私より2つ上だ。
茶髪のショート。左耳にリングのピアス。
下の名前は知らない。
だって興味が無いから。
壁に背を預け、ポケットに手を突っ込み私を見て微笑む菅原。
ロッカーの鍵を出し彼の前を通り過ぎ、自身のロッカーを開ける。
「今日が最後だよね。寂しいなあ」
『………』
無視。
元々ロッカーの中には鞄と私服の靴、サロンエプロンしか置いてなかった為、靴を履き替えるだけで充分。
制服は自前の黒のシャツに黒のジーンズ。
上は中に私服を着ている。だから脱ぐだけ。
でも今日はアイツがいる。
しかも2人きり。
だから今日は、靴を履き替えるだけにする。
靴を履き替え、コック靴を袋に入れ、アイツに一切視線を向けずに扉に向かう。